(オススメ書籍)ほとけを造った人びと 止利仏師から運慶・快慶まで

昨年発行された『ほとけを造った人びと 止利仏師から運慶・快慶まで』(根立研介著、吉川弘文館歴史文化ライブラリー366、2013年)では「ほとけ」すなわち仏像はいかなる人々によって造られたのか?を主題とし、止利仏師が活躍した飛鳥時代から運慶・快慶らの活躍した鎌倉時代前期に至るまで各時代における仏師の動向を、さまざまな文献史料による記述を基にして論述しています。ひとことでいえば「仏師の歴史」ということになるでしょうか。

個人的には「平安時代前期の仏師」の章が気になっていました。奈良時代の彫刻、少なくとも官営寺院に安置されるような仏像の多くは官営工房による製作でした。それらの仏像は作風もある程度調和のとれた造形でしたが、平安時代前期に入ると非常に個性的で多様な作風が増えるのに加えて、作り方の点でも捻塑的技法、木彫の技法、またその両者を用いて造られるものなど様々な技法が用いられます。これらの像が造られる背景には、民間の仏師など、官営工房系統の仏師とは異なる系統の仏師が多数存在していたであろうと・・・。ただ、この時代は官営工房系統の仏師でさえ史料に乏しくてその動向がわからないのですが、それ以外の仏師となると史料がないため、不明な点ばかりで、今後の研究の進展が期待されるところです。

そして、平安時代以後においても天皇関連の大寺院などでは依然として官の関与による造仏が中心で、それらの造仏を行う仏師は官営造像組織を移動しつつ、寺院や宗派にとらわれずに造仏を行っていたということです。この時代の中心的な仏師がそれぞれの寺院や教団内で専属で活動していたわけではないが故に、様式であったり、一木割矧造や寄木造といった技法が、宗派を超えて確立されていったという見方も面白いところでした。また、それまでは手工業者、工人としての位置づけでしかなかった仏師にも、この頃から僧籍を有するものが出てくるということも重要な点として挙げられています。平安時代以後、聖なる造形は聖なる者によって造られる、といった風潮が強くなっていくということも背景にあるようです。

こうして形はいちおうは僧侶の身分でありながら、特定の場所に限定されることなく流動的に造仏活動を行っていた仏師がやがて私的な工房を構え、そこから康尚のように天皇や貴族との深い繋がりを持つ仏師が登場する、ということのようです。さらに、本の後半では康尚や定朝に始まり、院派、円派、奈良仏師から慶派の運慶・快慶まで、主な仏師の事績を詳細に解説されています。仏師からみた仏像史ということで、仏像好きな方であればひととおり読んでおいて損はない一冊だと思います。


2014-01-28 | Posted in 仏像, 書籍No Comments » 

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