祈りの道へ-四国遍路と土佐のほとけ-

多摩美術大学美術館「祈りの道へ-四国遍路と土佐のほとけ-」展に行ってきました。今回の展覧会、以前よりお会いしたかった須崎市・笹野大日堂の大日如来坐像(本展覧会のポスターになっている仏様です)にお会いできたのが何より感激でした。

多摩美術大美術館

多摩美術大美術館

須崎市・笹野大日堂 大日如来坐像

笹野大日堂の大日如来は「NHKにっぽん心の仏像」や「NHKクローズアップ現代 特集 仏像盗難」などでとりあげられたことをご存じの方も多いと思います。

NHKにっぽんこころの仏像より

NHKにっぽんこころの仏像より

2009年に、笹野の小さな集落で、地元の人々によって守られてきた大日如来像が、実は慶派の優れた作品、それも、運慶の子・湛慶の作の可能性があるということで大きな注目を集めたのでした。

当時、安置されていたお堂が今にも壊れそうな状態であり盗難の心配があったことや、大日如来像自体も体躯の接合がほとんど剥がれてしまっていて修復の必要があったりしたのですが、地元の集落が29軒しかない小さな村であったため、管理・修復・保存は非常に大きな問題となりました。

2009年当時の笹野大日堂(NHK にっぽんこころの仏像より)

2009年当時の笹野大日堂(NHK にっぽんこころの仏像より)


しかし、2009年の香美市美術館での一般公開や、NHKの前述の番組で取り上げられたことなどがきっかけとなり、日本各地から保存や修復のために浄財が寄せられ、2011年にようやく像の修復が行われました。さらにその後、新たにお堂も建立され、現在は新しい大日堂で安置されています。
笹野地域では年に一度、大日如来を開帳し、その時には地域の人々が集まって縁日が催されるそうです。本展覧会監修の青木淳先生(当時、本像の調査も行われた)は、このように地域の方々が守ってきた仏像を介して、再び地域の方々が集まって盛り上がることができる、この仏像が地域の人々をつなげたということがうれしいということをおっしゃっていました。

木造大日如来坐像(県指定文化財, 像高49.4cm, 鎌倉時代)
作風の上では真如苑所蔵の大日如来像、栃木・光得寺大日如来像といった一連の運慶(工房)作品にその作風や形状、また構造面において多くの類似点が見られる。しかしながら、その一方で相貌がやや小振りであること、面相部の側面感がやや平板な印象を受けることなど運慶・快慶のそれとはやや異なる部分も認められる。本造にみられるこうした特色をもつ作品としては、(中略)湛慶とその工房作があげられる。
(展覧会図録より引用)

土佐のほとけ

笹野大日堂の大日如来の他にも、定福寺の六地蔵(笑い地蔵)、豊楽寺の四天王、名留川(なるかわ) 観音堂の古仏群など、土佐の仏像の多くの名品が多く出展されています。名留川観音堂の古仏群については、青木先生のお話によれば、別の調査で東洋町を訪問していた際に地元の方々から、神社に仏像がいっぱいあると言われ、半信半疑で行ってみたところ、20体ほどの平安古仏群が見つかって驚いたのだそうです。もともとはこれらの古仏群はそれぞれ周辺のお堂に別々に安置されていたのですが、明治の廃仏毀釈時にほとけさまを壊すにしのびないと思った地域の方々の手によって周辺の仏像が集められて、こうして神社内で残っていたようなのですね。名留川観音堂の古仏は、顔の中心に目鼻口が寄っている非常に印象的な顔立ちをしています。これが土佐の仏像の特徴のひとつでもあるようです。
こうした仏像は高知県外では初出展がほとんどで、それがいずれも露出展示ということで、顔の表情はもちろん、木の質感まで間近でじっくり拝観できるのも素晴らしい展覧会になっています。

四国遍路の文化

今回の展覧会は『四国遍路と「祈り」の原風景』ということがテーマとなっており、仏像ばかりでなく、考古学の時代の出土品から、遍路文化を伝える資料など非常に豊富です。特に四国遍路の文化を知る上では興味深かったのが、近世から現代におけるお遍路さんの納経帳だったり、「箱車」といった展示でした。

箱車というのは、人を乗せて人力車のような格好で引いて動かした乗り物で、足の不自由な人が四国八十八か所を巡礼する際に使ったものです。遍路道には当然、平坦な道だけでなく険しい山道も多いのですが、そんな険しい道に差し掛かったとき果たしてどうやってこの箱車で進んだのか?という疑問に行き当たります。そういう場合、箱車を持ち上げて運ぶしかないのですが、その都度、地元の村々の人々が協力して箱車を運んだのだそうです。それもまた、四国遍路独特の風習である「お接待」のひとつであり、つまりは地域の人々にとってはそうしたお接待を行うことが功徳だというわけです。仏像はもちろんのこと、こうした展示品についてもぜひ注目して観てみてほしいと思います。

イベントが続々と

今回、会期初日と翌日の2日間にわたって、青木先生の講演、展示品解説を何度も聴く機会に恵まれました。ひとつひとつの展示品について、出展の経緯や、その意義、展示品にまつわる裏話、関連する人々とのご縁などなど、いろいろなお話を伺うことができました。加えて、青木先生は、東京だけでなく、必ず高知でも同様の展覧会を開いて、ぜひとも地元の方にも観ていただきたいのだということも強調されていました。

今後もまだまだ講演やギャラリーツアーなどさまざまなイベントが催されますので、展覧会に足を運ぶのはもちろん、タイミングが合えばぜひ監修の青木淳先生や淵田学芸員のお話が伺える機会を狙って訪問されることをおすすめします。

開催概要

四国霊場開創1200年記念「祈りの道へ-四国遍路と土佐のほとけ-」展は2015年1月18日(日)まで多摩美術大学美術館で開催中です。
今回の展覧会図録の写真を撮影したカメラマンの大屋さんの写真も皆大変美しく、展覧会場にも多くの写真が展示されています。それらの美しい写真が掲載されている図録ですが、予想以上の売れ行きで早くも残り少なくなっているようです。こちらもお早めに!

「祈りの道へ-四国遍路と土佐のほとけ-」特設サイト
http://www.tamabi.ac.jp/museum/inorinomichihe/

多摩美術大美術館 祈りの道へ-四国遍路と土佐のほとけ- 

多摩美術大美術館 祈りの道へ-四国遍路と土佐のほとけ- 


2014-11-27 | Posted in 仏像, 公開情報, 四国, 展覧会No Comments » 

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