初不動後、修復へ。鎌倉、明王院の肥後定慶作・不動明王
明日は初不動!
毎月28日はお不動さんの縁日ですね。不動明王をお祀りする各地の寺院では護摩法要が行われるとともに、中にはこの日のみお不動さんが御開帳される寺院もあります。
鎌倉の明王院もそんな寺院。こちらのご本尊は鎌倉時代、慶派の有力仏師・肥後定慶の作とされる不動明王で、とてもすばらしい仏様ということでこの月例御開帳は仏像ファン的にも注目される日でありました。そんな明王院のご本尊ですが、昨年末の終い不動の際に伺ったお話ですと、2014年の初不動後に修復に入られるということでした。もし明日の初不動に参拝できる方は、ぜひこの機会を逃さず参拝されることをおすすめします。毎月28日は午後1時より護摩法要が執り行われ、一般の参加者もお堂に上がって法要に参加することができます。全員で観音経、般若心経、不動さまのご真言などを唱える約1時間弱の法要後、ご本尊の前まで行ってお参りするという流れでした。
明王院について
鎌倉の五大堂として知られる明王院は、嘉禎元年(1235年)、鎌倉幕府4代将軍・藤原頼経が発願して建立されました。元寇の折には鎌倉幕府からの依頼で元軍退散の護摩法要が執行された記録が残っています。鎌倉幕府将軍の発願によって建立された寺院として鎌倉市内で現存する唯一の寺院です。 明王院は五大堂と呼ばれるように、五大明王を安置していますが、現在の五大明王のうち、鎌倉時代の創建当初から残っているのは中尊の不動明王像のみで、残る四明王は江戸時代の補作です。江戸時代の火災の際、中尊のみが救い出されたようです。
明王院・不動明王坐像(重文,木造, 像高84.0cm)
当初よりその作風、写実的で気品のある表現から有力な慶派仏師の作によるものとみられていましたが、近年の研究成果により肥後定慶による作であるという見方が有力となっています。肥後定慶は運慶の作風を忠実に受け継ぎながらも、宋の絵画の影響を受けたと思われるにぎやかな装飾性のある衣などの表現に特徴のある作家として知られています。代表作としては、鞍馬寺の聖観音立像や大報恩寺の六観音のうち准胝観音立像などがあります。
明王院の不動明王坐像も、やはり衣の表現が大報恩寺の准胝観音の表現とよく似ていること、さらに『吾妻鏡』にほぼ同時期に頼経の室・竹御所の一周忌の本尊仏を肥後法橋(=肥後定慶)が造立したという記述があるように頼経と肥後定慶とが身近な関係であったことなどが肥後定慶作の根拠とされています。
五大堂 明王院
所在地:神奈川県鎌倉市十二所32
アクセス:「鎌倉」駅から京急バス 系統番号 鎌23・24・36番 「泉水橋」バス停より徒歩3分
拝観料:無料
参考文献
[1]山本勉, 日本の美術No.537 東国の鎌倉時代彫刻, ぎょうせい, 2011年
[2]鎌倉国宝館特別展図録「鎌倉×密教」, 鎌倉国宝館, 2011年