究極のバランス!道成寺・国宝の千手観音立像

今回から始まりました「たいがーセレクト 至高の仏像」シリーズ。名前の通り、私タイガースカフェの選ぶ個人的な『至高の仏像』を紹介するシリーズとなります。毎回、拝観したことのある仏像の中から個人的に特にイチオシのオススメ仏像をアットランダムに紹介していきます。

記念すべき第1回は安珍・清姫の伝説でも知られる紀州随一の古刹・道成寺の国宝・千手観音立像です。

道成寺本堂と三重搭

道成寺本堂と三重搭

仏像の概要

道成寺・木造千手観音立像(国宝, 平安時代9世紀, 木造漆箔, 像高294.2cm) 

千手観音立像(道成寺,国宝,平安時代) 

千手観音立像(道成寺,国宝,平安時代) 

道成寺の宝仏殿に安置される同寺の本尊像。ヒノキの一木造で、頭体幹部から台座の蓮肉までを共木としています。端正な顔つきと全体の均衡のすぐれた体躯をもち、天平期の古典的彫像に通じる格調の高さのある観音像です。およそ9世紀半ば頃の製作になると推定されます。通例の千手観音と異なり、44本の手を持ちます。
脇侍には日光・月光と伝える菩薩像(いずれも国宝)を従える、類例のほとんどない「千手三尊」像を構成します。伝・日光菩薩は本尊と作風も近く同時期の作とみられる一方、作風の違いから伝・月光菩薩はやや遅れての10世紀頃の造像とみられています。千手三尊の構成については、千手経の経典に日光・月光両菩薩が千手観音の効験の一端を担っていることも記されているため、これを典拠にして月光菩薩を補って三尊一組とされた可能性が考えられます。

ここがポイント!

これぞ、マイベスト千手観音に挙げられる千手観音さまです。概要でも書いているように全体のバランスのよさにまず目を奪われます。胴体部のバランスがいいばかりか、脇手を含めた44本の手がきれいに配置されていて、さらに脇手が本体の四臂と比較しても細すぎず太すぎず、実に自然な感じです。また、見事に左右相称形をなしているため、この像は正面観が実に美しいと思います。お顔も観心寺の如意輪観音や神護寺の五大虚空蔵菩薩などの平安初期密教彫刻の優品と似た部分がありながらも、それらの像よりもスマートな顔立ちをしています。三尊像は広い宝仏殿の中央壁際に祀られていて、背面に回ることはできませんがいろいろな角度から拝むことができますが、何よりも正面性がすばらしいので、少し離れて真正面から目があうところで正対してみてもらいたいです。時間の経つのを忘れて引き込まれること間違いなしです。

お寺の概要

道成寺仁王門

道成寺仁王門

文武天皇の勅願で大宝元年(701年)の創建と伝わる紀州最古の寺院です。発掘調査の結果から、創建年代が寺伝にいう文武天皇時代にほぼ合致することが確認されました。創建当初時の本尊は薬師如来だったという説もありますが定かではありません。能や歌舞伎で有名な安珍清姫伝説の伝説の舞台となっているのもこの寺院です。

宝仏殿

宝仏殿

宝仏殿と廊下で繋がっている縁起堂では、一定時間ごとに「道成寺縁起」の写本を使っての安珍・清姫伝説の絵説き説法が行われます。名物となっているものなので拝観の際にはぜひ聴くことをおすすめします。

その他

本堂の重文・千手観音立像

本堂厨子の重文・千手観音立像

本堂の裏側には北向観音と呼ばれる33年に一度の秘仏の鞘仏・千手観音像(室町時代作)が安置されています。調査したところ、この室町時代の木彫像の胎内から破損した奈良時代の千手観音像が発見されました。現在、本堂厨子に安置されている千手観音像(上写真)が破損した胎内仏を修復・補修したものです。

五劫思惟阿弥陀

五劫思惟阿弥陀

念仏堂の五劫思惟阿弥陀像は江戸時代の作。

道成寺三重搭

道成寺三重搭

拝観データ

道成寺(どうじょうじ)
所在地:和歌山県日高郡日高川町鐘巻1738
アクセス:JR 紀勢本線(きのくに線)道成寺駅 から徒歩7分
拝観時間:9:00~17:00(無休)
拝観料:宝仏殿大人600円小人300円 (国宝の千手観音は宝仏殿安置)
公式サイト: http://www.dojoji.com/1300/index.html

参考文献

[1] 松島健 編「日本の美術No.225 紀伊路の仏像」, 至文堂, 1985年
[2] 久野健 編「仏像集成7 日本の仏像<近畿>」, 学生社,1997年

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