生々しい秘仏・馬頭観音 福井・中山寺

シリーズ第3弾は福井県の中山寺本尊の馬頭観音坐像です。若狭(福井県の南西部)から京都に至る通称・鯖街道は北陸の海の幸、山の幸を都に送る重要な路として古代から拓けていました。その中心をなすのが小浜で、今でも平安時代の古像が多く伝わっています。また、若狭から丹後にかけては西国28番札所の松尾寺、馬居寺と今回紹介する中山寺などごく限られた範囲内に馬頭観音像を本尊とする寺院が集中しており、この地での馬頭観音に対する特別な信仰があったことをあらわしています。

仏像の概要

中山寺・馬頭観音

中山寺・馬頭観音

中山寺 馬頭観音坐像(重要文化財, 木造, 像高79cm,鎌倉時代)
坐像でありながら迫り来る勢いを感じる像で、馬頭観音蔵の名品のひとつ。永く秘仏として厨子に納められていたため彩色はもちろん、台座・光背まで当初のものが残る。頭体の均衡、八臂の配置、左右の相称を崩して拡げる膝などのプロポーションが見事に整っている。また、体も胴の締まったスマートな体型で、条帛や裳の衣文は写実的に刻まれている。木取りの法や彫り口、彩色技法などから13世紀半ばの手法を示し、洗練された作風から南都正系の仏師の作と想定される。

拝観記録

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中山寺本尊の馬頭観音は通常33年に一度開帳の秘仏で、最近では平成22年5月~平成24年5月の2年間に渡って開帳期間があったのは記憶に新しいところです。私も期間中、平成23年9月と開帳の最終日の2度参拝することができました。美しい仏様にお会いするといつでもそうなのですが、この馬頭観音様も惚れ惚れする美しさで、しばらくその場を動けないくらいの感動がありましたね。次回は16年後、平成40年の中開帳で開帳される予定と聞いていますが、何らかの特別開帳があることを期待してしまいます。
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ここがポイント!

中山寺の馬頭観音は、上にも書いたようなプロポーションの良さもあり実在感、生々しさを感じます。さらに言うと、写真のように右膝を軽く浮かし、さらに写真のように足の親指を反らしていることによって、そこに動きが現われています。
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以前も書いたことがありますが、動かない仏像において、いかに動きを表わすか?を考えたときにこのような足の指先の表現に行き着いたように思うのです。如来や菩薩立像が片方の足を少し前に出していたり、前傾姿勢になっている表現がありますが、これも「今、救いに行きますよ」という動きにつながります。仁王や明王などでも親指を反らせることによって、指先にまで力が入っている様子が伝わってきます。半跏や安坐の像でも足の親指だけ反らすことでによって、座っているところから今まさに動き出す、つまり静から動へ切り替わる瞬間の動きが感じられます。このように指先まで神経を込めた仏像であるがゆえに、全体として生きているような感覚を受けるのかも知れません。

お寺の概要

若狭富士と呼ばれている青葉山の中腹にあり、736年に聖武天皇の勅願によって泰澄大師が創建したと伝わります。青葉山は京都と福井のほぼ県境の山で、青葉山の京都側には西国29番札所の松尾寺、反対側の福井側に中山寺があるような位置関係になります。本尊のほか本堂も重要文化財に指定されており、山門には運慶の長子・湛慶の作とされる金剛力士像2体(いずれも鎌倉時代・重文)が安置されています。昭和54年に富山・石川・福井の真言宗寺院が中心となって開創した北陸観音霊場の第1番札所となっているほか、北陸白寿観音霊場の第1番札所、若狭観音霊場の第33番札所でもあります。

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拝観データ

青葉山 中山寺(なかやまでら)
所在:福井県大飯郡高浜町中山27-2
拝観時間:午前9時~午後5時
拝観料:400円
※ただし、本尊の馬頭観音は秘仏。
アクセス:若狭高浜駅からタクシー10分
公式サイト: http://nakayamadera.jp/

参考文献
[1]鷲塚泰光 編:日本の美術No.223 若狭・丹後の仏像,至文堂,1984年.
[2]井上一稔:日本の美術No.312 如意輪観音・馬頭観音像, 至文堂, 1992年.

2014-02-09 | Posted in たいがーセレクト, 仏像, 福井1 Comment » 

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コメント1件

 迦楼馬 | 2014.02.09 19:18

僕は4度お参りしましよ( ̄^ ̄)ゞ
たまたまこの時期、仕事で福井県高浜市を訪れてたもんで。
しかもその期間に中山寺へ仕事で訪問する機会にも恵まれ4度も参ってしまいました( ´ ▽ ` )ノ
生き生きとした生命力あふれる素晴らしい馬頭観音様で大興奮でした。

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